自力でも売れる?個人売買の可能性とリスク

呼び込みで家を売る人とそれに応じて買おうとする人
不動産の売買は、不動産会社が売主と買主の間に入って仲介する方法が一般的です。しかし、個人同士の売買が不可能というわけではありません。個人間で売買が成立すれば、不動産会社に支払う仲介手数料が不要ですから、その分の利益が期待できます。しかし、個人間売買には特有のデメリットやリスクがあることも念頭に入れておく必要があります。

不動産の個人間取引が普及しない理由は?

冒頭でも述べたように、自己所有の不動産ならば、個人間取引は可能です。不動産会社に支払う仲介手数料を考えると、個人間取引の金銭的なメリットは大きいでしょう。また、不動産会社に仲介を依頼しつつ、並行して個人間取引を成立させることも可能です。実際、一部の媒介契約では「自己発見取引(自分で取引相手を見つけること)」が認められています。

 

さらに、法律上も特に制限がありません。「資格が無ければ不動産の売買ができないのでは?」と思うかもしれませんが、自己所有の不動産を売買するだけなら無資格でも問題ないのです。また、不動産会社の仲介では必ずついてまわる「売買契約書」や「重要事項説明書」も、原則として不要です。(ただし、後々のトラブルを防ぐために売買契約書や重要事項説明書を作成、取り交わすのが一般的です。)

 

個人間売買は、以下のような流れで行われます。

 

1.売却したい物件の図面や、購入時の状態がわかる資料の準備

2.売却価格を決める

3.必要に応じて広告出稿

4.問い合わせや現地確認への対応

5.価格交渉への対応

6.売買契約書・重要事項説明書・履歴事項証明書などの作成(必要に応じて)

7.売買契約締結と決済、引き渡し

8.必要に応じて売却後のフォロー

 

かなりやることが多いというのが率直な印象ではないでしょうか。知人や友人に売買するならば、3から6は省略できるかもしれません。しかし、見ず知らずの他人に売却するときはそうはいかないのが実情です。こういった手間の多さが、個人間売買が普及しない理由の一つでしょう。

個人間取引のメリットとデメリット

個人間取引について大げさに考える様子の男性イラスト

では次に、個人間売買のメリットとデメリットを整理します。

 

【メリット】

・仲介手数料が節約できる

 

【デメリット】

・法的な書類の作成を自分で行わなくてはならない

・売却後にトラブルが発生する可能性とそれに対応しなければならないリスクがある

・広告出稿など、買い手探しにコストがかかる

 

メリットは実にシンプルで、仲介手数料がかからないことです。「たった一つだけ?」と思うかもしれませんが、不動産の売却において仲介手数料が占める割合は決して小さくありません。

仲介手数料は、売買価格が800万円を超える場合は

 

・(売買価格×3%+6万円)+消費税

 

という速算式で計算できます。仮に、売却したい物件が3,000万円で売れたなら、仲介手数料は「96万円+消費税」です。物件の価格が上がれば、それだけ仲介手数料の金額も上がっていきます。

 

ただし、デメリットで挙げたような事柄は、個人で対応するにはハードルが高いと言えます。前述したように、自己所有物件を売買する個人間取引では、売買契約書・重要事項説明書の作成が義務付けられていません。しかし、これらの法的な書類を作成しなければ、大きなお金が動く不動産の売買を口約束で行うことになります。口約束では「言った・言わない」でトラブルが発生するリスクがあるため、実際は作成が必要なのです。

 

さらに、売買契約を締結した後に、決済(売買代金の授受)と物件の引渡しを行いますが、通常の手順ではこのときに物件の所有権移転登記まで行います。登記手続きは、法令上一般個人が行うことに何ら問題はありませんが、専門知識を要し複数の書類準備が必要なので、大抵の場合は決済の場に司法書士に同席してもらい、代行を依頼します。この場合、当然司法書士への報酬の支払いが発生します。

 

また、コストでのデメリットとしては買主を見つけるための広告出稿費用がかかることも、忘れてはいけません(個人で利用できる広告媒体には制限があることも、デメリットになります)。

リスクを取るかコストを取るか

個人間売買は、確かに「仲介手数料」という大きなコストを削減できるメリットがあります。しかし、準備やトラブル対応を考えると、不動産会社に仲介を頼むよりも労力が多いことは否めません。

 

要は、「コスト削減を取るか、リスクと手間の削減を取るか」という二者択一なのです。売主に不動産取引や決済の段取り、登記手続きなどの知識があり、個人間売買のリスクや手間を適切に管理できる自信があるのなら、売主・買主での直接取引を検討してもいいかもしれません。ただし、リスクを考えてくれぐれも慎重に行うべきでしょう。

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